大判例

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東京高等裁判所 昭和61年(ネ)2046号 判決 1987年4月30日

控訴人

東光総合リース株式会社

(旧商号株式会社大富士総合リース)

右代表者代表取締役

鈴木進

右訴訟代理人弁護士

大林清春

池田達郎

白河浩

被控訴人

常陽センター商事株式会社

(旧商号北新工業株式会社)

右代表者代表取締役

吉田文太郎

被控訴人

細川泰二

右訴訟代理人弁護士

武井共夫

三野研太郎

被控訴人

須田敏夫

右訴訟代理人弁護士

上田周平

藤光巧

主文

原判決を次のとおり変更する。

被控訴人らは各自控訴人に対し金一四三九万〇二三〇円及びこれに対する昭和五六年二月一日から支払済みまで日歩金四銭の割合による金員の支払いをせよ。

控訴人のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審を通じてこれを二分し、その一を控訴人の、その余を被控訴人らの各負担とする。

この判決は、控訴人において各被控訴人に対し金二〇〇万円を担保に供するときは、金員支払いを命ずる部分に限り仮に執行することができる。

事実

〔申立て〕

<控訴人>

「原判決を取り消す。被控訴人らは控訴人に対し各自金三三一五万円及びこれに対する昭和五六年一月三一日から支払済みまで日歩金四銭の割合による金員の支払いをせよ。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求める。

<被控訴人細川、同須田>

控訴棄却の判決を求める。

〔主張〕

一  控訴人の請求原因

1  控訴人、被控訴人常陽センター商事株式会社(当時の商号は北新工業株式会社。以下「被控訴会社」という。)及び一審分離前被告株式会社昭和工機(旧商号トーケン機工株式会社。以下「トーケン機工」という。)の三者は、昭和五五年九月三〇日、控訴人がトーケン機工から代金二四八〇万円で機械を購入し、これを被控訴会社に対しリースに出し、被控訴会社は控訴人に対しリース料として合計三六七二万円を分割して支払うとの名目の下に、控訴人がトーケン機工に二四八〇万円を交付し、トーケン機工はこれを同会社と同じく園川秩夫(以下「園川」という。)によつて経営される訴外末広商事株式会社(以下「末広商事」という。)の被控訴会社に対する債権の弁済に充て、被控訴会社は控訴人に対し右二四八〇万円に利息金一一九二万円を加算した三六七二万円を、月賦金五一万円、七二回払いと定めて分割弁済する(ただし、月賦金の支払いが遅滞した場合には、控訴人は前払金として受領した金一五三万円を月賦金の弁済に充当することができる。)という内容の融資契約を締結し、その際被控訴会社は控訴人に対し、月賦金の支払いを一回でも遅滞したときは直ちに月賦金の残額全部を弁済すること及び日歩四銭の割合による遅延損害金を支払うことを約した(以下これを「本件契約」という。)。

2  被控訴人細川及び同須田は、同日控訴人に対し、右契約による被控訴会社の債務につき連帯保証した。

3  控訴人は、本件契約締結の前日の昭和五五年九月二九日、右契約に基づく交付金に充てる趣旨で、トーケン機工に対し金額二四八〇万円の約束手形を交付し、前記のような同会社と末広商事との関係から、これによつて被控訴会社の末広商事に対する債務は右手形金額の限度で消滅した。仮にそうでないとしても、右手形金のうち一四四〇万一〇〇〇円は当時被控訴会社の末広商事に対する債務の弁済に充当された。

4  被控訴会社は、右前払金一五三万円及び第一回の弁済金五一万円を契約締結時に支払つたほか、第二回ないし第四回の月賦金合計一五三万円をそれぞれ支払つたが、昭和五六年一月三一日に支払うべき第五回分以降の月賦金の支払いをせず、同日残額三四六八万円について期限の利益を喪失した。

5  控訴人は、昭和五六年二月二二日、前記前払金一五三万円を右残額に充当した。

6  よつて、控訴人は、被控訴会社に対しては本件契約に基づき、その余の被控訴人らに対しては前記連帯保証契約に基づき、債権残額三三一五万円とこれに対する期限の利益喪失の日である昭和五六年一月三一日から支払済みまで約定の日歩四銭の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する認否

1  被控訴会社

すべて否認する。

2  被控訴人細川及び同須田

控訴人、被控訴会社及びトーケン機工の間で昭和五五年九月三〇日控訴人主張のようなリース契約が形式上締結されたこと、その前日、控訴人がリースにかかる機械の代金の名目で二四八〇万円をトーケン機工に交付したこと、トーケン機工及び末広商事がともに園川を経営者とする会社であることは認めるが、その余は否認する。

本件契約の実質は、控訴人の末広商事に対する貸付けである。すなわち、

(一)当時控訴人の代表取締役であつた石田道雄(以下「石田」という。)は、昭和五四年三月ごろから、かねて親交のあつた園川が経営する末広商事に対しいわゆる空リース等の方法によつて融資をし、末広商事の行う高利の貸金業の資金を提供していた。その結果、末広商事の控訴人に対する返済額も次第に高額となり、月に四〇〇〇万円を超えるようになつていた。

(二)被控訴会社は、昭和五五年八月ごろ、同社所有の土地、建物を担保に、末広商事から約一五〇〇万円を弁済期同年末と定めて借り受けていた。

(三)園川は、末広商事の昭和五五年九月分の控訴人に対する返済金を捻出するため、トーケン機工に対するリース機械代金の支払いの名目で控訴人から新たな融資を受けようと企て、被控訴会社に対し、被控訴会社が控訴人から右機械のリースを受ける旨の契約書の作成に応じれば同会社の前記債務を分割払いにしてやると言つて右契約書を作成させた。トーケン機工は、右分割弁済金の支払いにつき被控訴会社の保証人になつており、このことは右契約が控訴人の末広商事に対する融資を目的とするものであつたことを物語つている。石田も、右契約の実質がそのようなものであることを認識していた。

(四)控訴人がトーケン機工に交付した金員は、被控訴会社の末広商事に対する債務の弁済には充てられず、末広商事の控訴人に対する債務の弁済金として控訴人に戻つている。被控訴会社の右債務については、末広商事は昭和五六年二月三日、被控訴会社が提供した前記担保物件によつて代物弁済を受けている。

三  被控訴人細川及び同須田の抗弁

仮に被控訴会社が本件契約に基づいて控訴人に対し債務を負担するに至つたとしても、被控訴会社代表者である被控訴人細川は、前記のように末広商事から同社に対する債務を分割払いにしてやると言われ、過失なく債権者は依然として末広商事であると信じ、同会社に対し前記のとおり代物弁済をしたものであるところ、本件契約による空リースの実施について控訴人と末広商事とは一体となつて行動していたから、右は債権の準占有者に対する弁済に当たり、これによつて被控訴人らは控訴人に対する債務を免れたものである。

四  抗弁に対する認否

否認する。

〔証拠〕<省略>

理由

一<証拠>によれば、次の各事実を認めることができる。

1  園川の経営にかかる末広商事は、昭和五五年八月ごろ被控訴会社に対し金一五〇〇万円を利息月五分、同年一一月末、一二月末及び昭和五六年三月末に各五〇〇万円ずつ返済するとの約定の下に貸し渡し、右貸金を担保するため末広商事の関連会社である日本装備株式会社を名目上の抵当権者として被控訴会社所有の土地、建物に根抵当権の設定を受けた。

2  控訴人は機械類のリース、割賦販売等を含む会社であるところ、その代表取締役であつた石田は、かねてからリース又は割賦販売を仮装して、金融業者である園川の経営する末広商事等の会社に対し多額の不正な貸付けを行つてきたが、園川の事業は不振で、石田は貸付金の焦げ付きを生じさせないためにやむなく園川との取引を継続している状態であつた。

3  園川は、前記のように被控訴会社に対して貸付けをしたのち、架空の機械リース契約を締結することによつて控訴人から更に事業資金の供給を受けようと企て、被控訴会社代表取締役であつた被控訴人細川が末広商事に対する被控訴会社の右借受金債務の支払いに苦慮していることにつけ込み、同被控訴人には前記貸付金の分割払いにする方法があると話をもちかける一方、石田に対しては、園川の経営するトーケン機工から控訴人が機械を買い受けたうえ、これを被控訴会社にリースに出したことにし、右売買代金の名目で控訴人がトーケン機工に交付する金額に利息相当額を加えた金額をリース料の名目で被控訴会社から控訴人に支払わせるという内容のいわゆる空リース契約を締結するよう提案してその承諾を得た。そこで、昭和五五年九月三〇日ごろ、トーケン機工と控訴人との間で、リース物件たる機械を代金二四八〇万円でトーケン機工が控訴人に売り渡す旨の売約証(甲第二号証)が、控訴人と被控訴会社との間で、右機械をリース期間七二か月、リース料合計三六七二万円、毎月の弁済金五一万円(ただし、被控訴会社がその債務の履行を怠つたときは、控訴人は別に支払われる前払金一五三万円から弁済を受けることができる。)、被控訴会社がリース料の支払いを一回でも怠つたときは、控訴人は直ちにリース料残額全部の支払いを請求することができる、遅延損害金の割合は日歩四銭とする、との内容のリース契約書(甲第一号証)がそれぞれ作成され、被控訴人細川及び同須田は被控訴会社の右債務につき連帯保証をした。右契約を前提として、控訴人は同月二九日トーケン機工、実質的には末広商事に対し金二四八〇万円を交付し、他方、形式上、右契約締結時に前払金一五三万円と第一回のリース料五一万円の合計二〇四万円を末広商事が被控訴会社に代わつて控訴人に支払つたものとされ、また、被控訴会社は末広商事を介して控訴人に対し、リース料総額から右前払金の額と第一回のリース料額とを控除した残額に相当する金額五一万円の約束手形六八通を交付した(以上のうち、昭和五五年九月三〇日前記リース契約が形式上締結されたこと、控訴人がトーケン機工に対して金二四八〇万円を交付したこと、並びに末広商事及びトーケン機工が共に園川の経営する会社であることは、控訴人と被控訴人細川及び同須田との間で争いがない。)。

4  右のとおり、本件契約がいわゆる空リース契約であることは関係者の間で了解されていたが、その実質上の法律効果についてどのような了解があつたのかについては、控訴人は、これを、末広商事の被控訴会社に対する貸金債権を控訴人の被控訴会社に対する債権に変更し、被控訴会社は控訴人に対しリース料名下にこれを分割弁済するという内容のものであると主張するのに対し、被控訴人細川及び同須田は、右契約の実質は控訴人の末広商事に対する融資契約であつて、それ以上の効果を生ずるものではなく、末広商事の被控訴会社に対する貸金債権は右契約締結後も従前どおり存続し、後日抵当物件をもつてする代物弁済によつて消滅したと主張する。

そこで考えるに、前記のように、被控訴会社が本件契約締結に応じたのは、単に末広商事が控訴人から融資を受けるのに協力するためではなく、自らの債務を分割弁済にして貰うという利益を受けるためであつたこと、右分割弁済の内容を定めたものとしては控訴人と被控訴会社との間で作成された前記リース契約書が唯一のものであること、被控訴会社は本件契約に基づいて前払金等を支払い、リース料に相当する約束手形六八通を発行したこと等の諸事実に加えて、<証拠>によれば、本件契約締結前、被控訴会社の経理担当者であつた被控訴人須田は末広商事から、右契約の締結に応ずればさきに貸し付けた一五〇〇万円のほかに若干の金を渡せるかも知れないと言われたが、結局契約締結後に利息、手数料等を差し引くと被控訴会社に渡す金はないと言われたことが認められるのであつて、以上によれば、本件契約締結に際し、被控訴会社は、従前の末広商事に対する借入金返済義務に代えて控訴人に対するリース料名義の金員の支払義務を負うことが三者間で合意されたものと認めるのが相当である。尤も、<証拠>によれば、末広商事はその後昭和五六年二月ごろに被控訴会社に対し前記一五〇〇万円の貸金があると主張し、その代物弁済としてフジ工商株式会社名義で前記抵当物件を取得したことが認められるが、右本人尋問の結果によれば、右は、被控訴会社の内紛によつて被控訴人細川らが退陣し、本件契約のことを知らない吉田文太郎らが代わつて被控訴会社の経営に当たるようになつたのに乗じて末広商事が右のような主張をした結果であることが認められ、前記認定を覆すに足りる事実とはいいがたい。

<証拠>によれば、末広商事は本件契約に基づき控訴人から取得した金員のうち一四四〇万一〇〇〇円のみを被控訴会社に対する債権の弁済に充当し、また、前記のように前払金等二〇四万円を被控訴会社のために立替払いしたものとして経理上の処理を行つていることが認められるが、本件契約の趣旨に照らし、末広商事の右のような内部的処理のいかんにかかわりなく、被控訴会社の末広商事に対する債務は控訴人が本件契約に基づき二四八〇万円を末広商事に交付したことによつて消滅したものと解すべきである。更に、<証拠>によれば、トーケン機工が本件契約締結の際被控訴会社の控訴人に対するリース料債務につき保証人になつたことが認められるが、右事実は、被控訴人細川及び同須田が主張するように、本件契約が控訴人の末広商事に対する融資契約であることを示すものであるとはいいがたい。

ただし、もともとリース契約を仮装したにすぎない本件契約においては、控訴人と末広商事との間で定められた売買代金額二四八〇万円はたかだか右両者間の計算関係を示すにすぎず、また、被控訴会社がその一五〇〇万円の借主としての義務とは別に右二四八〇万円の弁済につき法的責任を引き受けることを承諾したものでもないのであるから、右契約は前記の一五〇〇万円の貸金債務につき債権者の交替による更改をしたものであり、更改前の旧債務は右元本とこれに対する利息制限法の制限内での利息金債務の限度においてのみ有効に成立していたものとみられるから、新債務も右の限度においてのみ成立するものというべきである。

二被控訴人細川及び同須田は、前記代物弁済は債権の準占有者に対する弁済であつて、これによつて被控訴人らの債務は消滅した旨主張する。しかしながら、前記認定事実によれば、被控訴会社は本件契約の趣旨が前記のようなものであることを認識して右契約を締結したものであり、前記代物弁済の際右契約上の債権者を控訴人でなく末広商事であると誤認していたとしても、これについて過失があるものといわざるを得ないから、右主張は採用することができない。

三以上によれば、被控訴人らは、控訴人に対し、本件契約においてリース料として支払いを約した金員のうち一五〇〇万円とこれに対する利息制限法の許容する年一割五分の割合による利息金の支払義務を負うことになる(なお、前記のように右義務の性質は貸金の返済義務であり、本件契約によつて債権者が末広商事から控訴人に変更されても、その法的性質は変わらないものとみられるから、右更改後も依然として利息制限法の適用があるものと解される。)。そして、これに対する割賦金四回分及び前払金一五三万円の充当による弁済として控訴人の自認するもののうち、第一回分の割賦金及び前払金の充当によるものが弁済としての実質を有しないことは前記のとおりであるから、残る第二回から第四回までの割賦金を右利息(貸付け後であることが確実な昭和五五年九月一日以降の分)、元本の順に充当すると、別表記載のとおり、昭和五六年一月末現在残存している元本額は一四二一万二五七三円、利息額は一七万七六五七円である。そして、本件契約において元利金を合算して定められたリース料につき遅延損害金の約定をした趣旨は、履行遅滞が生じたときに、その時までに履行期の到来した元利金の合計額に更に約定の割合による遅延損害金を付して支払うものとする趣旨と解されるので、結局、被控訴人らは、控訴人に対し右元利合計額一四三九万〇二三〇円及びこれに対する被控訴会社が期限の利益を喪失した日の翌日である昭和五六年二月一日から支払済みまで約定の日歩四銭の割合による遅延損害金の支払義務を負うものであり、本訴請求は右の限度で正当として認容し、その余を失当として棄却すべきである。

四よつて、右と趣旨を異にする原判決を右のとおり変更し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、九二条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官丹野 達 裁判官加茂紀久男 裁判官片桐春一は、差し支えのため署名押印することができない。裁判長裁判官丹野 達)

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